ま~た、だ。
 目の前で「下らんガラクタだ」とポイ捨てされた作品が、けたたましい音を立てながら足元に転がってくる。
 オイオイ、精密機械だっつったろォ? 乱暴に扱うんじゃねェよ、使わないにしてもよォ。

 軍人気質丸出しの、このいけすかねェ赤ダルマのオッサン。前線で戦う奴らの力になりゃいいと思って、暇つぶしに能力3倍ベルトだの潜在能力増強マシンだの作ってるっつーのに、何が気に入らねェのかコイツにだけは受け取られた試しがない。
 曰く「戦場でつまらん小細工は無意味だ。己の力なくして何が出来る」とか。あーぁ、バカな頭は固い事しか考えられないのかね。柔軟性の欠片もねェ。今時古臭いんだよ、キルルかアンタは。

「っつぅ事で、ギロロ先輩に俺様は不要、っと」

 聞こえないようにボソリと呟いたが、立ち去ろうとしていたオッサンはぴたりと立ち止まった。へぇへぇ、大した地獄耳だなァ? 良かった、嫌味ったらしく言っといて。

「そんな事は、ない」

 顔だけ振り向かせて、オッサンは言いにくそうにそんな事を言った。歯が浮いているところを見る限り、非常に嘘くせぇ。

「ガラクタとか言うくせにかァ?」
「ガラクタはガラクタだ。そんな玩具は役に立たん」

 気持ちいいくらいキッパリ断言したなァ~。
 コレ、見る奴が見たらか~なり偉大な発明なんだがな。オッサンの脳みそで理解出来ないものはガラクタかよ。
 このまま言われっ放しも癪だから、嫌味のひとつでもくれてやろうとした時だった。
 ぷいっと顔を背けて、オッサンが呟く。

「だがお前の造る武器は別だ。あれをガラクタだと思った事は一度もない。どの大手メーカーの武器よりも、お前の手で造った武器を信頼している」

 言ってから、自分でもらしくもない事を言ったと思ったのだろう。オッサンは赤い顔を更に赤くして、不機嫌そうに鼻を鳴らし、すたすたと歩き去ってしまう。
 なんてこった、嫌味も言えなかったぜェ。俺様としたことが。

 普段は口が裂けても言わないくせに、たまにそんなふうに優しいから。
 嫌がらせしたくもなるってモンだろォ?
 アンタの嫌いな『ガラクタ』をいつか絶対認めさせてやる。いくら嬉しくったって、俺様は『嫌な奴』として、アンタのその言葉を素直に受け取る訳にはいかねェからなァ。

 あぁ……でもアンタの武器の開発に、少し本気出してやってもいいかもなァ?

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